新生児の発達(生後4週間まで)
出生児体重の平均は男児が3,200g、女児が3,000g。
体重2,500g 未満で生まれた乳児を低体重児、中でも在児37週未満で出産し体重2,500g 以下の乳児を未熟児と言います。
出生後は体重の増加率が高く、3ヶ月で2倍、1年で3倍になります。
◆乳児特有の原始反射について
- モロー反射:びっくりした時に両上肢を開いて何かに抱きつこうとする反射。
- 把握反射:拳に触れるものを直ちに握る反射。生後間も無くだと、数秒ではあるが把握反射によって自分の体を支えることができる。
- 口唇探索反射:口唇にものが触れると、その方向へ顔を向けて吸い付くようなポーズをする。
- 嚥下反射:ものを飲み込む反射。
- 初期歩行:両手で支えて立たせてゆっくり前方へ移動させてやると、歩行する。
◆新生児の感覚能力について
- 視覚:視力は0,02 程で、母親の胸に抱かれたときに見つめ合えるための十分な視力は持っている。黒や赤などはっきりした色を認識しやすい。
追視もすぐに現れ、明るいところで水平にものを動かすと追視する。 - 聴覚:聴覚は胎児期からすでに存在する。単なる音に対する反応よりも、人の声への反応の方が敏感で、特に女性の声に大きく反応する。母親の声に対しては感受性が高く、母親の声によって泣いたり、発声したり、体の動きを静めるなどの選択的な反応をする。
- 嗅覚も発達しており、生後6日には自分の母親の匂いと他の母親の匂いを区別しているといわれている。
生後1ヶ月から3ヶ月
このころの赤ちゃんはお世話をする大人に完全に依存して生きているが、次のようなことができるようにもなります。
- 母親にあやされると顔を見てにっこり笑う。
- ガラガラを握らせると動かすことができる。
- 手を注視することができる。
- 光に対しして頭や目を向ける。
- ものを口に入れる。
- 母親や保育者以外の人に触れられると、それが違った人であるということを知るようになる。
※赤ちゃんが自分の手や足を見つめたり、舐めたりする行為をハンドリガード、フットリガードと呼び、赤ちゃんの体や脳が順調に発達している証拠です。自分に手がある、足があるという気づきや、自分の意思で手足を動かせることを確認する行為です。4ヶ月を過ぎる頃に自然に消滅していきます。
※赤ちゃんの知性の発達について、スイスの発達心理学者、ジャン・ピアジェによると、すべての赤ちゃんは知的で、生まれた時から学ぶことができるといいます。「赤ちゃんを揺すってあやす」距離が、赤ちゃんが物事を学習する環境として最適なのです。
◆愛着
抱いているとおとなしい赤ちゃんがベットに寝かせると泣くようになります。泣いて訴えることが赤ちゃんにとってただ一つのコミュニケーションの手段なのです。
赤ちゃんが泣く理由
- 空腹・痛み・オムツが濡れてる・暑い・寒いなどの不快感。
- 抱っこしてもらいたい、相手をしてほしい、あやしてほしい。
- 寂しい、怖い。
- 親の不安(赤ちゃんは大人の不安を敏感に感じ取ります)
赤ちゃんが泣いた時に、保育者が常に応答的に答えてると、赤ちゃんは自分が愛されていることがわかるようになり、信頼感や愛着の心が作られていきます。
生後3ヶ月から6ヶ月
3ヶ月を過ぎた頃から反射的な運動が消失し、手を伸ばしてものを取ることができるようになります。これは子どもの知的な行動における大きな変化であり、何かを学ぶように、ものを手に取ったり、見たり、口に入れたりするようになります。
○体のいろいろな部分(胸、膝、生殖器、爪など)に気づくようになる。
○自分と他のものの関係に気づく。
○5~6 ヶ月で離乳食が始まる。
- ○4ヶ月~
-
- 体を弓なりにして体の向きを変える。
- 支えられれば短時間のおすわりができる。
- ○5ヶ月~
-
- 仰向けから寝返りしてうつぶせになり、ハイハイの姿勢に移る。
- 足を口に持っていき、しゃぶる。
- 腹ばいの状態で頭を持ち上げ、足で突っ張り体を動かし、蹴る。
- 支えられると30 分くらいは座る。
- ○6ヶ月~
-
- 高這いをして激しく移動する。
- 大人の膝の上に安定して座っていられる。
- 両足を開いて一人でおすわりができる。
◆愛着
生まれてすぐの興奮状態から、快・不快を分化して、うれしさや喜び、不機嫌や怒り、恐れ、不快を声や動作、表情で表すようになります。このころから大人は、ひとりひとりの子供の違い、個性を感じ取るようになります。
◆言葉の出現
それまでは母音性の音声やクーイング音であったものから、次第に話し言葉の最初の段階である「喃語」をしゃべり始めます(アーアー・ダッ、ダッ・バッ、バッ・
マムマムマムなど)
◆遊び
「高い高い」「いないいないばー」など大人が関わってくれる遊びをよろこぶ。
握る、音が出る、叩いたり振ったりできる、口に入れて舐めることができるおもちゃをよろこぶ。おもちゃは、清潔であること、丈夫であること、洗えるもの、尖っていないもの、小さく飲み込むようなものではないこと、欠けがないか、など注意する点があります。
生後6ヶ月から9ヶ月
ハイハイや座るなどの移動運動が自由自在にできるようになります。自分の周りのおもちゃやものに対する興味や関心が深まり、手を伸ばしてそれを取り、扱うようになります。
生後9ヶ月までの発達について
- 這う、座るが自由にでき、8ヶ月頃からはものにつかまって立ち上がることができる。
- 見たものを手でつかむ、ものがある方向に焦点を合わせ移動することができる。
- 手の届くものは全てが探索の対象になる。
- 物を放り投げる。
- 指先で物を掴むことができる。
子供の目の届くところにあるもの全てに興味をもつようになるので、子供の周りにあるものは全てが安全、衛生であることが必要になってきます。高所も好むようになるため、高いところからの転落を防いだり、机の上の鋭利なもの、熱い飲み物などにも注意が必要です。
◆愛着
この頃から母親への愛着が増していき、人見知りをするようになっていきます。また、母親が目の前からいなくなると泣くようになります。これは、まだ「ものの永続性」が十分に発達しておらず、母親の姿が見えないと、永久にいなくなったと思ってしまうためです。
☆いないいないばあ遊びについて☆
いないいないばあ遊びでこどもとは「ものの永続性」を習得していきます。いないいないばあで目の前から大人の顔が消えても、それは決していなくなったのではなく、永続している、存続していることを学ぶようになります。
◆ことば
生後7ヶ月くらいになると、こどもは大人の表情や身振り、命令や話しかけに反応し、大人の話や動作を理解できるようになってきます。いつも話しかけてくれる母親や保育者の「マンマ、食べようね」「おすわりしましょう」といった言葉に反応し、行動できるようになります。つまり日本語の文法、規則がわかるようになります。バイバイなどの言葉にも反応し手を振るようにもなっていきます。
「マンマンマン」「ダダダダ」「チャチャチャ」などの喃語から、9ヶ月頃には大人やお人形に「バアーバアー」と話しかけるようになり、喃語から意味のある音声へと変化していきます。言葉の意味はわからなくても、大人が真似て語りかけることで、子どもの発音を促し、子どもも発音を楽しむようになります。
生後9ヶ月から12ヶ月
生後9ヶ月~10ヶ月で伝い歩きや支えなしで立つことができるようになり、生後12ヶ月には一人でヨチヨチ歩きができるように成長していきます。大人の音声を真似したり、自分が獲得した10個ほどの単語を使って話しかけることもあります。
それまでの経験した出来事を短時間記憶することもできます。他者の感情を理解したり、ユーモアのセンスも出てきて、大人にとっても楽しい遊び相手になってきます。一人遊びも楽しんで行うことができます。
◆愛着
身近なお世話をしてくれる大人に対して、はっきりとした信頼感を発達させていく頃です。見知らない顔や声に対しては、拒否することもあります。信頼している大人と一緒にいることで精神的な安定を保持しているため、その大人がいなくなったり、知らない人が話しかけてきた時に泣いたり拒否する反応は、普通の発達と言えます。
◆ことば
喃語に混じって、初語をしゃべり始めます。いわゆる「アイウエオ…」という日本語の音韻体系を持った最初のことばで、そのものの存在と、それの名前、音声が結びついて発せられることばのことを言います。
◆遊び
身近な大人や兄弟の遊びや動きを模倣して遊ぶようになります。また、兄弟や友だちからおもちゃを取り上げられると泣いて抗議し、そのことを覚えて兄弟や友だちを警戒するようにもなります。太鼓を叩いたり積み木を積み上げありしたとき、「上手」と褒めると得意げな表情をします。新しい身体的な技能を探索し、試す機会を求めています。
生後1年から2年
生後1歳を過ぎると、それまでに比べて身体的な成長は緩やかになりますが、乳児から幼児への移行期であり、基本的な生活習慣の自立への時期でもあります。よちよち歩きから、2歳になれば走ることができるようになります。
言葉の発達もめざましく、2歳前には二語発話もでき、言葉の理解がしっかりとしてきます。周りの大人の語りかけを一生懸命に模倣しながら、自発的に発生する言葉を獲得し、2歳の終わり頃には1000 語くらいは話せるようになると言われるほど発達します。
生後2年目を迎えると、子どもの親に対する依存度は減っていき、見慣れた人には抱きついたり、愛情を表現するようになります。